18歳で管理組合の理事になった‼
「防災がボクの役割」
―札幌市豊平区のコスモビュー豊平橋管理組合法人―

2023.04.09 全国の団体の動き

役員の成り手がいないと言われるなか、昨年11月、弱冠18歳の大学生が167戸の大世帯のマンションの役員に就任し話題になっています。現在、北海学園大学経済学部地域経済学科で地域コミュニティーや地域社会の在り方を学ぶ19歳の目黒彰良さん。なぜ、役員を引き受けたのか? 誘いの声をかけた管理組合理事長の宮本勝市さんもご一緒に話を聞きました。

(聞き手:石田悦郎)

──どんなきっかけで理事就任を決断したのですか

目黒理事もともと人命救助の仕事にあこがれ、18歳から豊平区消防団で活動しています。そこで得た防災の知識を生かしてマンションの避難訓練や防災活動に役立てたかったこと、理事長の宮本さんから声掛けをいただいたことで決めました。
僕は4歳からここに住み、物心ついた頃から住民の方々から優しく接してもらっていたことを覚えていて、その恩返しの意味もあります。

宮本理事長 私にとっては、2018年9月6日の胆振東部大地震での目黒君兄弟たちの活躍があります。エレベーターが止まり、上階が断水になって高齢者たちが困ったとき、水の入ったポリタンクを12階から14階の最上階のお宅に運んでくれたのです。まだ13歳の中学生だった彼と仲間たちに居住者たちが感謝して、文化交流祭の舞台で管理組合から感謝状を手渡しました。
居住者を大切にする行動や考え、成人になればきっと役員をやれる素質を持つと直感しました。そこで彼が18歳になったのを機に声を掛けました。

──理事会ではどんな仕事を担当していますか

目黒理事防災担当理事兼コスモミニ文庫委員です。もともと、防災には関心があり、宮本理事長の「ここでの仕事が将来、きっと役立つよ」の言葉が背中を押してくれました。これから居住者にとって必要な防災対策を提案していきます。
「コスモミニ文庫」は1住戸分の広さの集会室にあって、居住者から寄せられた1200冊ほどの本の半分を展示しています。入れ替えの力仕事はお手のものですが、直木賞や芥川賞といった人気作の購入や運営のアドバイスは専門の女性担当委員から頂戴しています。おかげでコロナ禍でも貸し出しが増えています。

宮本理事長理事会は監事2名を含め役員8名で構成し、半数が女性です。役員以外にも文庫担当や広報紙編集委員、小公園の花壇担当もいて、月1回の理事会を日曜日に開催しています。
役員の年齢はひところ、ほぼ70歳代でしたが、目黒君のほか30歳代が2名で平均51歳9か月に下がりました。高齢者の知識と若い方の発想がうまくかみ合うよう努めています。

──実際に理事会に入っての印象はいかがですか

目黒理事毎回、新鮮です。以前はマンション内の出来事や決め事も結論しか見えなかったのが、実は目に見えない所でいろんな意見が交わされ、それでこんな結論になったということがよく分かります。居住者からの情報や組合の対応に直に触れるのはいい勉強になります。

──集会室は2LDKほどの広さ、1階エントランスは学校の教室二つ分か。ビックリです

目黒理事集会室は会議のほかマージャンや茶話会、サークル活動に、エントランスは夏祭りの展示室や仮設の喫茶店に利用されています。
僕は集会室を使ってラジオ体操や高齢者の足腰強化の場にしたいんです。防災はまず、丈夫な足腰から、が僕の考えですが「下の階に迷惑になる」と宮本さんに拒否されました(笑い)
でも、エントランスについては「コスモ防災会」副本部長として9月の避難訓練に向けいい利用方法がないか考えています。訓練に限らず、例えば芸人や落語家を呼んで周りの施設からも見に来てもらうとかも提案したいです。

──ところで、建物と人の高齢化はマンション共通の悩みです

宮本理事長マンション内を見渡すと、65歳以上単身高齢者世帯は全国平均の2倍ほどの21%いて、居住人口340名の1割近くが80歳代と年々高齢化が進んでいます。築35年でもここを終の棲家と考える若い方も増え、うちのマンション価値が評価されていると実感します。それだけに安全安心な暮らしをどう提供していけるか、理事会に置いた独居・高齢者対応担当理事や目黒君たちと一緒に考えていきたいものです。

19歳の目黒理事と役員歴20年の宮本理事長の画像
ミニ文庫担当の19歳の目黒理事(左)と役員歴20年の宮本理事長
広いエントランスで。テニスと水泳で鍛えた90㎏、183㎝の体格