熊本地震から5カ月遅れる 復旧大規模損壊マンションは、17件に

2016.09.19 防災の取り組み

震災以来、被災マンションを対象に、5月以来、さまざまなセミナーを開いている熊本県マンション管理組合連合会(平江澄雄会長)は、当初の相談会から、復旧工事の進め方、 耐震補修、不動産評価のありかた、など管理組合のニーズを先取りしたセミナーを連続的に開いた。会場の確保、参加呼びかけなど準備作業は大変だが、被災マンションの実情を見ると、動かざるをえないという。
一方で、熊本市に被災マンション法の適用を法務省に要請するよう働きかけるなど、目配りする。

被災マンションは、435棟

熊管連は独自に、熊本市内のマンション棟数は、847棟と調査しているが、そのうち全壊は、17棟としている。熊本市とも協議、棟数をつかんだ。ピロティ形式が大半だ。当初、4,5棟かと踏んだが、調査を進めるうちに、全壊マンションが増えてきた、という。被災マンション法の適用を受ければ、公費解体の申請なども出てくるとみられる。ただ、熊管連に相談に来るマンションで、建替えを大手業者から提案されている管理組合もあり、管理組合に慎重な対応をアドバイスしている。阪神淡路大震災でも、200棟を超える建えが 実施されたが、公費解体などを急ぐあまり、改修でも十分再生できたマンションも、建替えられたマンションもあった。といわれる。
一方、壁のせん断亀裂等一部損壊のマンションは、310棟とみられ、これらのマンションは改修などへの動きが出てきそうだ。ちなみに、半壊は77棟、大規模半壊は22棟となっている。
ただ、改修への動きも鈍く、築15年程度のマンションが多い熊本市では、昨年に第1回目の大規模修繕工事を終えたところも多く、積立金などが底をついたマンションもあり、復旧工事をやりたいが、資金手当てがつかない、というケースもある。見積依頼もぼちぼちあるが、ほとんど現実の工事に入れない、とする改修業者もある。
マンション改修業界では、今年夏ごろから、東京オリンピックの先行工事が動きだすなどで、東京を中心に工事量が急激に増えてきた。職人不足も加速し、資材の値段も上昇気味だ。熊本へ工事をシフトしようにも、現実にはむづかしい、と断言する業者もある。
一方、5月14,15日に熊本市内で開催した被災マンション相談会の会場でも、参加者から問題が指摘されたマンションへの罹災証明書の発行が遅れた問題は、その後熊管連などの熊本市当局への抗議で、急速に改善され正常に戻った。戸建を含め、1次調査発行件数は84,622件、2次調査発行件数は、28,213件。(8月22日現在)

マンション学会、熊本地震などでシンポジウム

日本マンション学会では、10月15日(土)午後2時半から,東京都港区白金の明治学院大学で、「大地震に対して今できる備え~首都圏直下型地震を見据えて」を開く。小林秀行・東京都マンション課長「耐震化促進に向けた東京都の取り組み」、小島浩明・東北マンション管理組合連合会常務理事「東日本大震災からの教訓」などの講演がある。

(全管連事務局長・川上湛永)

新たに判明した大規模損壊のマンション、中心部で、右に倒れ掛かる棟、隙間が空いている =熊本市内で
新たに判明した大規模損壊のマンション、中心部で、右に倒れ掛かる棟、隙間が空いている =熊本市内で
4階部分では、地割れ現象がくっきりと =同じマンションで
4階部分では、地割れ現象がくっきりと =同じマンションで