熊管連のリーダー・平江会長が急死 熊本地震被災マンション復興に全力
NPO法人熊本県マンション管理組合連合会の平江澄雄会長(享年73歳)が8日午後10時5分、入院中の熊本大学病院で、急性肝炎のため死去した。4月14日の熊本地震以来、被災したマンションの管理組合の支援に駆け回るほか、相談会、支援セミナーを10数回開くなど、11月初め入院するまで、休みもとらずに奔走してきた。大きく被災した自らのマンションの復旧工事にも尽力した。その死は、災害関連死といっていいのではないか。
年末の12月28日午後5時過ぎ、入院先の病院にお見舞の電話をいれた。意外に元気な声だった。「血管に菌が入ったらしく、皮膚に異常が出た。治療はうまくいっているので。年明けにも、退院が見えてきますよ」と張りのある声だった。そして、「壊れたマンションの復旧を急がないと」と早く、現場に戻りたい口ぶりだった。
地震の約2週間後、山本育三前会長とともに、熊本入りした。夕暮れが迫る中、平江会長は、自らハンドルをとって、被災した自らのマンションを案内。廊下の壁が大きく、崩れていた。エレベーター周りの壁も穴が空く。「部屋の片づけもできていない、寝るスペースだけ片付けただけです」。それより、熊管連に来る相談への対応で走り回っている、という。地震から1カ月後、5月14、15日に熊管連の入るビルで、被災マンション相談会を企画する。全管連、マンション学会、全国マンション問題研究会、マンション計画修繕施工協会などが全面協力するが、PR、動員、会場準備など中心的業務は、熊管連だった。2日目。挨拶に立った平江会長の表情は、なぜか硬かった。「昨日の相談会のあと、お前ら金儲けのためにやっているのだろう、という電話があった。私どもは、一銭も参加費をもらっていないし、みな手弁当です。被災したマンションを助けたいという思いでやっているのです」と切々と訴えた。正義感の強い、平江会長らしい、一面だった。
一方、初日の相談会で、マンションには、罹災証明書が発行されていないことが明らかになったが、平江秋長は、市会議員ともども。罹災証明発行がスムースに出るように市当局と掛け合い、数日後、実現した。
かゆいところに手の届くセミナー開催
熊管連は、地震後、具体的なテーマで、10回のセミナーを開いている。具体的な内容で、管理組合にとって役に立つ内容と評判になった、参加者も多かった。
6月17日、24日 | 被災マンション建物修復方法について |
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7月15日 | 阪神淡路大震災復旧過程に基づく、事例と合意形成の取り方 |
7月28日 | 各種被災マンション支援制度 建物評価損による雑損控除について |
8月9日 | 雑損控除について 耐震補強について |
10月1日 | 熊本地震を踏まえての不動産評価について |
10月29日、 11月4日 | 被災住宅応急修理制度の採用について |
11月6日 | 地震損害復旧工事見学会 |
12月9日 | 雑損控除に関する管理組合の対応について |
熊管連の今後の運営について
平江会長の急死で、熊管連は、被災マンションの支援を中止するわけにはいかない。
会長職は、4月の総会まで、当面空席のままで、現在副会長の稲田雅嘉氏、堀邦夫氏が代行を務める。穴をあけるわけにはいきません、と稲田氏は、決意する。
マンションボランテイアとは何か
平江会長の場合、まじめすぎる性格、正義感などから、震災後、八カ月、働きずめだった。全管連などマンション管理支援は、一定の報酬は得ても、生活が保証されるようなことはまったく期待できない。無償に近いところさえある。そこで、活動することは、使命感だけが優先する。「ほとんど趣味に近い」と断ずるひともいる。
難民救援、災害など被災民の救援活動等に携わる欧米のボランティア団体は、活動家の生活が保証されている団体が多い。企業、民間などからの寄付金も、3割は事務経費とされ、そのなかから、スタッフに一定の報酬が保証される。寄付する側も了承している。
マンション管理支援は、難民救援などと性格は異にするが、これからマンションの超高齢化で、管理不全マンションもじりじりと増え、支援の対応は複雑、多岐にわたることが考えられる。弁護士など専門家に任せればいいではないか、というのが国や自治体の方向のようだが、多様な人生経験の積み重ねを経て参加し、その柔軟さから、管理組合と的確に協調できるボランティが数多く活躍する。平江さんのような、災害関連死を出さない環境を一日も早くつくりあげたい。それには、国や行政も一緒に動いていただきたい。