地震と「マンション地震対応箱」

2018.09.23 防災の取り組み

今回の北海道胆振東部地震で、全道で停電が発生し、エレベーターは全てで止まり、水が供給されない事例が多数見受けられました。約40時間の停電でへとへとに疲れたとの声が多く聞かれました。
建物の損傷では、札幌市北区のマンションで、壁のひび割れが見られましたが、幸い大きな損傷には至っていないマンションが大部分でした。
マンション地震対応箱(熊本県マンション管理組合連合会が2年間の震災の経験から作成した貴重なものです。
1箱9,800円(税別、送料着払い)。マンション管理組合に一つ備えておくと、震度6、震度7等大地震が起きたら、管理組合が何をやるべきかがわかる内容です。地震対応箱について、内容の一部を紹介します。
マンションで、地震に遭遇したら、管理組合はどうするか。その前に、まず自分の身を守ることが大事です。 次に、「地震対応箱」を開きます。53枚のA4版の厚紙カードがクリアケースに入っています。

地震当日

家族の安否確認、住居からの脱出、他の居住者の救助、マンションの危険個所の把握と立ち入り禁止措置、トイレの確保、炊き出し、情報収集と伝達を行う。
「今あなたがやるべきことが書いてあります。」「それを順番にやるだけです。」・・・以下のミッション(使命・任務)を実行していきます。

ミッション1『まず近くにいる人を安全な場所に5人以上集める』
ミッション2『その人たちで防災用具を集める』
防災グッズケースには「ハンドマイク」・「バール」・「ヘルメット」・「立ち入り禁止テープ」「三角ポール」「簡易トイレ袋」「懐中電灯」などが入っています。*今回の北海道の地震では、小型発電機・水を運ぶ簡易リヤカー・水を入れるポリタンクなどを備えていたマンションもありました。
ミッション3『住民を救助する』
部屋から出られない人がいる場合にはバールで玄関ドアをこじ開ける。
ミッション4『二次被害を防止する』
2人でヘルメットをかぶり、危険地域に立ち入り禁止テープを貼ってと三角ポールを設置する。
ミッション5『非常用トイレ袋』を配り使用方法を教える
しばらくは下水に障害が発生し使えないおそれがある。
ミッション6『実行したことを掲示する』
例えば「停電で水が使えません。水は〇〇の給水口が使えます。」などを掲示。
これ以降は、「災害対策本部(理事会)」に引き継ぎます。
ミッション7『災害対策本部を設置する』
「災害対策委員会組織図」に、総務・渉外・会計・広報などの役割に沿って人名を記入していく。
「災害対策委員の募集」の掲示を貼りだす。
ミッション8『情報コーナー』を設置する
ミッション9『対応箱の中のあらかじめ作成していた連絡網の安否確認欄』にチェックを入れていく
地震後、マンションを離れる方が多くおられるので、携帯番号やメールアドレスを確認しておく。
「避難場所」に避難する場合には、必ず避難先を知らせてから避難してもらう。
点検調査が終わるまで「電気・水道・ガスの使用禁止」をお願いする。
「ゴミ出しルールのお願い」で分別・大型ごみの集積所を案内する。支援物資の受け入れと配布について掲示する。
夜間パトロールを実施する。
ミッション10『マンションの被害状況調査』の簡易マニュアルで「建物の傾き」など測定。
専門家がいない場合、安全側(悪いほう)に判断する。
壁式構造以外は、廊下やバルコニーの壁のひび割れは構造部材ではないので無視してかまわない。
損傷度Ⅳ(ひび割れ幅が2mmを超える)以上の場合は、建築構造専門家に被災度区分判定をお願いする。(写真で具体的に示されている)

地震翌日から1週間

応急危険度の判定、建物の被災状況の把握、ライフライン復旧、被災状況説明と今後のスケジュールの説明会

地震から1週間以降

罹災証明の申請、地震保険の申請,被災度区分判定(日本建築構造技術者協会への依頼…有料)、随時住民説明会開催、危険個所の緊急工事の実施、復興への合意形成

地震から3か月以降

保険判定への対応、罹災証明への対応、建物調査診断・設計(設計事務所の専門家へ依頼)、工事費見積もり(設計図書をもとに施工業者へ依頼)、資金繰り検討(積立金・保険金・義援金・補助金など、組合員負担発生の場合の金融機関紹介)、臨時総会開催(あらかじめ組合方針を発表しアンケート調査などを行い、普通決議事項であってもできるだけ特別決議要件の3/4をめざす)、復旧工事実施(事前に工事説明会を数回に分けて実施するなど居住者全員の参加をはかる)。臨時総会開催の案内文書例

*地震保険
一部損(5%)、小半損(30%)、大半損(50%)、全損(100%)
主要構造部分(柱・梁)で判定
*罹災証明
一部損壊、半壊、大規模半壊、全壊
生活に支障のある部分で判定 専有部分(屋内)被害状況の調査
ひび割れ・剥がれ箇所の調査票を各戸にお願いする。

補修工事実施後工事進捗状況のお知らせ、各戸配布・掲示例

最後に、復旧工事方法のカードがあります。図示して、例えば廊下壁の「軽微」な補修であれば、「戸当たり7万円が目安」から「大破であれば168万円」と6段階にわたって具体的な金額が示されています。これは素人にもおおいに役にたちます。

別冊で、震災を受けた「鉄筋コンクリート増建築物の補修・補強に関する資料」がついており、これが「対応箱」の大きな特徴です。多くの写真と図でわかりやすく説明されています。 ぜひ、今回の震災を経験して、全てのマンションに、この「マンション震災対応箱」を備えておくことを強くお勧めします。

購入は、各地の全管連連合会(20連合会、全管連ホームぺージに表示しています)にご連絡ください。取りまとめて熊本連合会に取り次ぎお届けします。 あるいは、熊本県マンション管理組合連合会に直接申し込んでください。

(北海道マンション管理組合連合会旭川支部長 水島能裕)