マンション被災、相当に甚大 熊本地震

2016.04.28 防災の取り組み

4月14日発生した熊本地震。益城町、南阿蘇などの住宅倒壊による被害で49人が、亡くなるなど被害が広がっているが、熊本市内のマンション被災も、徐々に被害の状況が明らかになってきた。

マンションの壁が破壊したり、高架水槽が倒壊するなど被害は深刻だ。室内に家具が散らばり、住めなくなり、避難所に一家で避難、あるいは車中泊を続けている家族もあるが、マンションの被災が、マスコミで伝えらことが極端にすくなく、実相がわからないまま2週間が過ぎようとしている。現地のマンション副理事長に聞いた。

(全管連事務局長・川上湛永)

2週間たつのに、被災当時と状況は、ほとんど変わらないというのは、稲田雅嘉さん(熊本市中央区のマンション副理事長)、稲田さんは、熊本県マンション管理組合連合会の副会長も務める。

14日夜の地震で、飛び起きたが玄関ドアが開かずからだをぶつけて、外に出た。14階建ての7階に住むが、上階の住民から、助けての声に、管理事務所から、バールを取り出し、こじ開けた。ドアが開かない住戸は、他にも数戸出た。
数日後、開設された避難所には、9割近い住民が避難したほか、近くの駐車場に車を止めて避難する住民も多かった。大半の住民は、1週間たち、マンションに戻ったが、小さい子どもを抱える住民は、避難所から戻らないケースもある、余震が続く中で、精神的にダメージを受け、避難所の体育館の方が、安全という思いからだ。

マンションに戻ったが、一番困るのはトイレ。集会所で順番を待つが、容器に水を入れてゆく。この水の確保が、至難だ。14階の屋上にある高架水槽が壊れ、使えない。洗たくは、コインランドリー通いだ。高架槽は、被害を受けたマンションが多く、復旧は60日待ちという。

近くの食品工場の井戸に水をもらいにゆく毎日。隣のマンションは、2年前に井戸を掘り、今回、水の確保の苦労から解放された。エレベーターは、4日目に動いた。激しい揺れで、エレベーターシャフトの軸が傾いたと懸念されたが、奇跡的に復旧した。

壊れた高架水槽、復旧は60日後になる(熊本市中央区)

応急措置もとれず、被災当時のままのマンション
マンションの被害は、14階建ての7,8階の中間階に被害が出たケースが多い。ベランダに面した壁に穴が空いた。耐震壁ではない、雑壁。耐震的には、問題は少ないという専門家の判断だが、余震で空隙が広がるようで不気味だ。開放廊下の壁の一部に、x状の亀裂が出たところが、数か所。10階以上に、特に被害が集中した。マンションの方角により被害が異なる。横揺れの違いによるようだ。マンションでも、別棟の5階建て棟は、ほとんど無傷で、揺れの違いで、こんなにも差がでるのか。

ベランダ雑壁の損傷(熊本市中央区)
開放廊下に散乱した用具など (熊本市中央区)
廊下に面した壁にX条の亀裂が入る(熊本誌中央区)

近くのマンションで、棟と棟をつなぐエクスパンションジョイントが、ずれた例があり、テレビで盛んに紹介されたが、本来、エクスパンションジョイントは、異なる形状の建物同士を分割して、地震の揺れによる外力を伝達しない役割を果たすもので、見当違いの騒ぎだ。 マンション住民が片付ける家具などのゴミも敷地内にたまる一方だ。市に連絡しても、収集に来ない。マンションは、2週間になるが、混乱したままだ。 子どもたちの通う、小中学校も5月9日まで休校の措置が取られている。この状態で、通えるのか不安が募る。
マンション管理組合は、阪神・淡路大震災、5年前の東日本大震災で、地震保険加入率が上がっているが、稲田さんのマンションも加入していた。熊本県の地震保険加入率は、28・5%とされ、九州地区では、高い方だ。(ちなみに宮城県は、50・9%)

マンションをつなぐエクスパンションが揺れでずれたマンション(熊本市内)
震災がれきを集積したマンションの一角、どこの被災マンションもがれきがたまる一方だ(熊本市内)