相談会に207被災マンション管理組合、380人が参加
熊本県マンション管理組合連合会(平江澄雄会長)、全管連、日本マンション学会、全国マンション問題研究会、マンション計画修繕施工協会は、5月14,15日、熊本市中央区桜町1の一番舘ホールで、被災マンション相談会を開いた。2日間で、207管理組合、380人が参加した。初日は、午前10時の開場前から、行列ができるほどで、被災したマンションをどう復旧するかで困惑する管理組合の実情が浮き彫りになった。
初日の14日、管理組合の役員、一般のマンション住民が、受付に列を作った。元ホテルの会場は、アッと間に席が埋まった。用意した100席が埋まり予備椅子を並べた。相談員として、九州各県から駆けつけた弁護士、全管連に参加する管理組合団体役員、建築士などは、座る席もないほど。マンション問題研究会に所属する弁護士は20名余が参加した。元全管連に属していた博多の福岡県マンション管理組合連合会からも、畑島理事長ら6名が応援に駆け付けた。
オリエンテーションの第1部で、折田泰宏弁護士(元日本マンション学会会長)が、被災マンションに係わる支援制度、被災マンション法の説明、21年前の阪神・淡路大震災の経験を踏まえたマンション建替えの仕組み、さらに地震保険について、1時間半講演した。
2部として、5年前の東日本大地震で、自らのマンションが被災した東北マンション管理組合連合会常務理事の畑中泰治氏が、体験からの講演を30分。畑中氏は、「罹災証明書は、もう出ましたね」と出席者にといかけると、「全然出ていない」と会場から一斉に声が上がった。罹災証明は、すべての公的支援になくてはならない基本書類ですと強調すると。会場からは「出ていません。どう手続きをすればいいのか」という声が再び上がった。罹災証明書については、熊本市も準備の遅れを認め、16日中には担当窓口を福祉課に設けるとしたが、20日なってようやく担当窓口の開設をホームページで案内した。
(折田氏の講演資料は、熊管連のホームページからダウンロードできます。)
正午過ぎから、会場に10のテーブルを設け、弁護士、全管連役員等の相談員が2,3名つき、順番に相談に応じた。相談は、時間がかかるケースもあり、2日間とも午後6時近くまで続いた。 相談事例からみると、理事会、総会、住民説明会を開いていない組合が多く、住民が、避難で散りじりになった現状の側面を示した。
事例から見ると
- 11階建てのマンション、棟と棟をつなぐエキスパンションジョイントが、4月16日の本震で50センチも隙間が空き、危険で、どう対応すればいいか、という深刻な相談。10センチ程度の隙間なら注意すれば渡れるが、50センチは、隙間から落下する恐れもある。建て替えもふくめ、対応を管理組合で慎重に協議すべきだ、という一応の回答を出した。
- 開放廊下の壁にx条のせん断亀裂が出て、危険なので、早く業者に依頼したい、相見積りで進められるか、という相談には、災害時に相見積には時間もかかるし、復旧工事が殺到することで、業者が応じないのではないか、1社に決めて検討した方が現実的、というやり取りが、住民と相談員との間であった。
- 16戸という小規模マンション、2階にせん断亀裂、6,7階に壁にひびが入ったが、地震保険の保険会社がまだ調査に来ない、住民に高齢者が多く、復旧の見通しが立たない、という女性理事長。保険会社との対応等一歩づつ進めてと回答
- 5階建て、5棟の100戸の団地。4号棟が、傾き、床に置いたボールが転がるほど。給排水管が損傷し、修復工事を始めたが、時間がかかりそうだ。住民は、隣の体育館の避難所と傾いた住戸を往復するが、夜間は余震を恐れ、避難所に移動する。修復が可能かどうか、調査が必要だ。理事会を週1回は開き、住民に情報公開するという指摘をした。
- 39戸のマンション、温水器からの漏水が10件発生、築12年経過なので、設置した会社の責任は問えないのでは、と回答した。
- 89戸で、ピロティ部分の柱が損傷して、住民は避難,5戸しか住んでいない。修復は可能なのか、という相談。建て替えが必要かどうかは、再調査したうえで、判断するしかないとして、継続的に相談を続ける、とした。 行政にも相談窓口がないため、2日間の相談会が終わっても熊管連には、ひっきりなしに相談の電話がかかる。平江会長以下、10名の理事の自宅マンションは、いずれも被災した。平江会長の部屋は、片づけもままならず、休むスペースだけを片付けただけで、救援に駆け回っている。 熊管連では、相談シートを分析、長期の対応が必要なケース、専門家に依頼する方が適切などに分類し、これから長期的に対応してゆく方針を決めている。
(全管連事務局長・川上湛永)