2019年7月7日 発信

100年マンションをつくる  第2回 川管ネット  
2018年度「第三回管理セミナー:100年マンションに挑戦しよう」概要

*2018年10月13日(土)(13時45分から16時30分)川崎市多摩市民館で上記セミナーが開催されました。セミナー内容については以下の通りです。別に当日のPPの一部を参考資料として添付します。

【セミナー内容】  
13:30~13:40  挨拶         神管ネット    会長  加藤 壽六   
13:40~13:55  今回のテーマ紹介   講師:川管ネット 理事  高橋 秀行
13:55~14:20  マンションの減価償却から見る年数とは
             講師:川管ネット 副会長 相川 洋明
14:20~15:05 100年マンションへの考え方                    
             講師:(一社)マンション計画修繕施工協会  常務理事 中野谷 昌司
15:05~15:15  休憩
15:15~15:35  高耐久性塗料について 講師:関西ペイント販売(株)油谷 龍一
15:40~16:00  外断熱工法について  講師:STO ジャパン(株)鈴木 裕之  
16:00~16:20  川崎市の地球温暖化対策への取り組みについて  
             講師:川崎市環境局地球環境推進室 菅原 秀行  
16:20~16:25  閉会の挨拶      川管ネット会長      宮島 茂

【講演】
マンションの長寿命化とヴィンテージ化という考え方    
一般社団法人マンション計画修繕施工協会  常務理事 中野谷 昌司

当協会では、適切な維持保全などにより長寿命化が図れているマンションを適切に評価出来る仕組みを構築することを目的として、マンション関係団体とヴィンテージマンションプロジェクト推進協議会(以下、推進協議会という。)を平成29年に立ち上げました。  
まず、この「ヴィンテージマンション」とは、「古くても価値のあるマンション」を定義することとしています。
現在の既存マンションを売買する際の価格評価手法が、宅建業者による取引事例比較法のみにより行われていることで、そのマンション共用部分の耐久性能や機能性能までは評価されておらず、適切な修繕工事や改良工事が行われていても築年数とともに価格が下がっているのが現状です。これは、財務省令によるコンクリート建造物の減価償却期間の耐用年数(以前は60年、平成11年の改正で47年)を参考にしており、一般的なマンション居住者でもこのあたりの年数を寿命と考えている人も少なくありません。
そこで、推進協議会においてマンション共用部評価書及びその評価基準を定め、マンション共用部の耐久性能、機能性能、居住環境性能を見える化(点数化)し、築30年以上のマンションでも適切な計画修繕工事等による高評価(耐久性能、機能性能、居住環境性能すべてがA評価)であるものを認定し、広く世間に周知されることで資産価値の向上につながる、そのような取り組みを開始しております。
特にマンションの耐久性能については、これまでのデータの蓄積により、耐震性が確保出来ていれば物理的に100年でも使用することが可能なマンションがほとんどであるといえます。このコンクリート躯体がしっかりしていれば、給排水設備や窓サッシ、玄関扉などの高機能、高性能部材に取り替えていくことで新築マンションにも劣らぬ機能性能や居住環境性能とすることができるのです。
欧米では、築100年を経た建物でも適切な評価の仕組みがあることにより、既存住宅市場の活発な流通がなされています。国土交通省でも、日本の既存住宅流通の現状に関して、こうした適切な評価がなされ、流通が促進されるような様々な施策を打ち出していますので、この流れに沿った適切な評価と関係者の理解を深めるべく、当協会及び推進協議会では、その周知、啓蒙活動を進めているところです。  
 
【セミナー内容】
1、100年マンションに挑戦しよう テーマ紹介について  
  1)高経年マンションについて 国交省資料より
    ①  マンションストックの現状と今後の予測・居住者年齢     
    ② 維持補修・建替え、補修・修繕・改善の概念と見通し   
  2)鉄筋コンクリートについての考え方
 
 
  3)マンションの耐久性対応  
    ①高耐性塗料の考え方
    ②外断熱の考え方 

2、マンションの減価償却からみる年数とは   
  1)減価償却と法定対応年数
    ①法定対応年数47年(税法上の減価償却年数)と実際対応年数(100年)について
  2)鉄筋コンクリートの耐久性     
    ① 鉄筋(引張り強度)とコンクリート(圧縮強度)のハイブリッド     
    ② コンクリート中の鋼材腐食・コンクリートの水和反応による中性化について
 
 
3、100年マンションの考え方
  1)、ビンテージマンションとは   
   古くとも資産価値のあるマンション 資産価値海外のマンション状況
    ① 古マンション市場活性化・マンションの評価手法と現状
    ② ビンテージマンションプロジェクト・ 推進協議会(H28年4設立) 
    ③ ビンテージ改修のイメージ  ・ 社会の変化に伴ったハイスペック改修による資産価値向上 ・評価基準
4、高機能・高耐性塗料について
  1)塗装の目的 と大修繕工事の外壁塗装仕様   
    下地調整剤の役割   
  2)上塗り塗料の種類と耐久性及び価格について         
    アクリル塗料・ウレタン塗料、シリコン・フッソ塗料( 高耐性・高価格)
  3)塗料の種類により適材適所   超高層ビル外装・ 低汚染や防水機能等にて選択、
5.外断熱工法について   
  1)外断熱工法について   
  2)歴史/湿式断熱工法・国内市場・防火   
  3)利点/湿式外断熱工法    
    ・室内環境の改善 ・省エネルギーの効果  ・建築駆体の保護  ・外観の刷新
 
 
6.川崎市における地球温暖化対策について   
  1)地球温暖化とは   
  2)温暖化に関する国内外の動向   
  3)川崎市の地球温暖化対策について   
  4)スマートハウス補助金について
*コメント  
川管ネットでは毎年数回の管理セミナー及び夏季基礎講座を開催しています。又、相談業務をおこなっています。ここ数年「マンションの長持ち!」「減価償却は耐用年数ですか!」「高経年マンションの維持管理は!」等の質問や相談が増えて来ていました。そこで、一度このような問題に対してセミナー開催を検討しました。維持管理の重要性とそれに伴う基本的な命題として「中性化問題:鉄筋爆裂問題」が有ります。これは「マンションの存在での基本命題でもあります。そこで「中性化対策」から「マンションの寿命検討」が考察できることから、「ビンテージマンションの考え方」を中心にセミナーを組み立てました。そのために「講演の前で」(今回のセミナーの概要紹介)「コンクリートの耐用性」{減価消極と耐用年数等}を行いました。そして「ビンテージマンションの考え方」(中性化で中性化深さが重要!)で100年マンションへの対応について行いました。その後、マンションの外装で重要な塗装について最新の動向を、今後重要となる耐久性向上や室内環境改善等の外断熱工法の紹介を行いました。両社とも今後の長期耐用マンションでも重要なポイントとなりますので。  当日の参加者は76名(含川管ネット理事)になりました。このテーマに対する関心度が伺われました。又、数人の参加者から適当な時期に同じようなセミナーの開催希望もありましたことを付記します。
2019年6月16日 川管ネット 理事 高橋 秀行
(川崎市多摩区、多摩市民会館で) 

2019年6月23日 発信

100年マンションをつくる  第1回 若葉台団地  
    100年マンションを目指して 関東学院大学名誉教授・全管連相談役 山本育三

―横浜若葉台「100年マンション・プロジェクト」と全管連「専有部分を含む配管類の管理組合による更新工事」調査から―

1.横浜若葉台団地の「100年マンション憲章」制定の意義  
2007年初夏、若葉台住宅管理組合協議会(*注1)では、「100年マンション憲章」を制定した。 若葉台の各管理組合がマンション管理に取り組むときの基本的な指針を示したものである。当時第1期入居から30年近く経ち、建替えの検討をしてはどうか、という意見が出始めたころで、若葉台のようなしっかりした構造で、一定の広さの専有面積があり、管理もある程度のレベルでされている中では、建替えを検討するより、長く住み続けることを標榜し、管理のより向上を目指し、かつ、それらが若葉台で共通の理解に立つべきである、との視点から、本協議会で100年マンションを目指す憲章を作り、全管理組合と区分所有者、まちづくりに取り組んでいる機関、団体とも共通の目標にしようということで、下記の憲章ができたのである。

緑のまち横浜若葉台100年マンション憲章
1. 管理組合は、マンションの「長寿命化・再生」を目指し、様々な施策と活動を行っていきます。
2. 管理組合は、「守る管理」から「攻める管理」を実践していきます。
3. 管理組合は、この素晴らしいい「住・緑環境」をまもり、積極的かつ広域的に協調して管理していきます。
4. 管理組合は、世代間の平準化を積極的に図り、「世代循環型団地」の創出を目指します。
5. 管理組合は、オール若葉台組織の一員として、魅力ある100年タウンを目指し、「緑のまち横浜若葉台」を目指します。 


*注1横浜市旭区に神奈川県住宅供給公社の開発による約6千数百戸の集合住宅団地があり、その中の分譲集合住宅(マンション群)計15管理組合で管理組合協議会を構成したもの。2019年6月で設立30周年になる。

2.100年マンションプロジェクトの取組みとその成果  
若葉台100年マンション憲章の5項目のうち、2、3、5については、若葉台の各管理組合が比較的高いレベルで管理運営を進めており、本協議会での情報交換も一定の成果を上げているが、第1項の建物・設備の長寿命化・再生を目指す管理は、管理組合の理事会が日常管理で忙殺されており、例え個別の改良等はやっていても、100年を射程に入れて、長期的な見通しに立った計画については必ずしも十分とは言えない。また、第4項の「世代循環型団地」を目指すとなると、そもそも管理組合の業務が共用部分を主とした保全・管理にあることから、個々の管理組合で取り組むには難しい面が否めない。  そのような背景から、2013年度~2015年度の3年間に亘り、本協議会が主となり、「若葉台100年マンションプロジェクト」を立上げ、以下の4項目について、それぞれのWGを構成し、具体的な目標を設定して検討することになった。2013年度、2014年度は、財団法人の若葉台まちづくりセンターが代表となり、2WGは、国土交通省の「マンション管理適正化・再生推進事業」支援・研究助成制度による調査・研究経費の助成を受けた。プロジェクトチームの概要を下記に箇条書きに示しておく。メンバーは、それぞれのWGに関連ある若葉台内の活動組織やまちづくりセンター、一部外部の専門家などに参加を頂いた。詳細は、ホームページに報告書を掲載してあるので、本論ではプロジェクトチームと成果の概要を述べておく。 

〇100年マンションプロジェクト本委員会:本協議会幹事・顧問、各WG主査、県公社・センター委員で構成し、各WGへの主課題提起、とりまとめ等を行う親委員会である。
①改修技術WG:住棟を長寿命化するための建築等改修技術を検討し、大規模修繕工事の質の向上と工事周期の延長を図る。
②設備小委員会:特に給排水設備等の改修工法や仕様・材料、さらに管理組合規約を検討し、高経年マンションの改良による再生を図る、改修技術WGの下部のWGである。
③昇降機WG:共用部分の階段でいす式昇降機を検討し、エレベーターの無い住戸、エレベーターの非停止階住戸へのアクセスでバリアフリー化を図る。
④転出入WG:世代循環型団地実現に向け、若い世代の転入を促進すべく環境の整備を図る。



各WGの成果を本委員会で精査し、本協議会に報告し承認を得た。以下その抜粋である。

(1)改修技術WG:主として大規模改修工事周期の延長の理論構築と新工法の採用等
成果:4つの項目に対し、高耐久仕様の塗料の使用や新工法の採用等
① 躯体補修(下地補修): 脆弱部除去、清掃、フィラー処理下地調整等の徹底
② 外壁仕上げ(塗装) :雨がかり部分、人・物の触れる部分でフッ素系塗料を採用
③ シーリング:シーリングの上に仕上げコーティングを乗せ,保護期間を延長
④ 防水:庇、共用廊下等の雨がかり部分で高耐候性トップコート使用    
現状13年又は15年修繕周期を18年に延長し、『修繕周期18年を目指す大規模修繕工事の仕様案』(新仕様案)作成                        
新仕様案の採用等はコスト高となるが、増加分が周期延長の間に積立てられる積立金と比較して少なければ、マンション管理組合の合意形成が可能である。 若葉台の実際の建物(高層板状棟・塔状棟、中層棟)をモデルとした工事費用を試算して検証を行った。 高層棟:周期13年を18年にすると、周期1.38倍、工事費1.14~1.17倍 中層棟:周期15年を18年にすると、周期1.2倍、工事費1.15倍になり、外壁修繕に関する限り徴収修繕費は値上げせずに済むことになる。

(2)設備小委員会(WG):配管類の工法・材料、専有部分を含む更新工事と規約改定
成果:上記課題と検討結果のうち本項では、 ①区分所有者によるリニューアル工事の時の禁止事項と ②専有部分の配管類について、管理組合による一斉更新工事を可能にする規定改定案の2点を指針として下記に示しておく。 (条項名は、ある管理組合の規約を事例として提示)
①区分所有者による専有部分のリニューアル工事に際しての禁止事項(以下、規約本文) 第18条(区分所有者による専有部分の修繕等) 
  (1,2,3項省略)
  4 第1項の承認があったときは、団地建物所有者は承認の範囲内において、専有部分の修繕等に係る棟の共用部分の設備並びにテレビアンテナ差込口、感知器、インターホン、玄関扉等の補助錠の工事を行う事ができる。
  (5項省略)
  6 専有部分の中にある共用設備配管、共用通信設備、共用テレビ配線等については全体に影響を及ぼす事から修繕をしてはならない。
  (7項省略)
  8 専有部分の中に設けられているパイプスペースは専有部分であっても管理組合の共同管理部分であることから個々の修繕に合わせて狭くするなどの行為をしてはならない。
  (9項、10項省略)
②専有部分の管理組合による共同管理・修繕積立金取り崩しによる工事等に関する規約改訂案 第19条 共用部分と構造上一体となった専有部分、共用部分及び隣接・階下の各住戸に著しい影響の起こる可能性のある場合の設備配管、電気配線、通信設備等については専有部分であっても、管理組合により修繕をおこなうことができる。
(下線部分改定)
2 第1項の工事に際し区分所有者は正当な理由なしに工事を拒否できない。(改定)
3 第2項の正当な理由がある場合のうち、当該 区分所有者が第1項の工事内容と同等以上の仕様で一定の期間内に遡ってすでに工事実施済みの場合、管理組合は当該区分所有者に対して一定の損失補填をすることがある。(改定) 第29条(修繕積立金) 管理組合は、各団地建物所有者が納入する修繕積立金を積み立てるものとし、積み立てた修繕積立金は、土地、付属施設及び原則として団地共用部分(建物共用部分等)の、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費を充当する場合に限って取り崩すことができる。(現行通り)
(1)一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕、(現行通り)
(2)第19条第1項に示す、管理組合による専有部分の修繕等
(改定、以下の号、略) これらの指針は、2019年の若葉台第3住宅管理組合総会でほぼ本案で規約改定を行った。

(3)昇降機WG:階段の昇降に不自由な人へのいす式昇降機、可搬型昇降機の推奨
成果:
①依頼先:施工を(株)マイクロエレベーターに、設計・製作を大同工業(株)に依頼。
② 棟の形状別に以下のタイプごとに検討 中層住宅:1階から4階(5階)まで階段室ごとに1台で 螺旋的に昇降 高層住宅(スキップアクセス棟):必要な個所のみに設置、/原則エレベーター停止階への上または下に1階分設置、/ 基本的に階段形状が同じ場合は移設が可能、/基本的には屋外仕様 、但し一部建物は屋内仕様を検討
③一次見積価格:中層階段用1機約480万円(2013年12月)、高層用エレベーター停止階から1フロアの上下で、約190万円(屋内仕様)~約240万円(形状差による)
④現行法律面との整合性:横浜市担当部局への問い合わせ結果は、上階下限200㎡問題、階段幅等、いずれもクリアすることが判明した。
⑤公的助成の可否:現段階では適用項目がなく、今後の課題である。
⑥可搬型昇降機の検討:いす式階段昇降機の設置は、管理組合にとって、コスト面、合意形成面で簡単に進む話ではないため、車いす利用者等の必要性の高い人に限定して使用する前提で、可搬型階段昇降機の追加検討も行った。3機種(3社)を検討した結果、小回りが利く、乗り心地が良い、と言う面を重視して、アルバジャパン社の「スカラモービル」を昇降機WGとして推奨した(価格は車いす付で約142万円)。今後、関係団体等で検討するときの参考資料にとどめた。

(4)転出入WG:
①転出入バンクの構築/
②子育てや共働き世代の居住を展望できる環境整備として、保育所の充実/③若い世代の流入
成果:
① 転出入バンクの構築:若葉台まちづくりセンターの仲介業部門に「新制転出入バンク登録制度」を作成した。1990年代に当時の若葉台管理センターと本協議会間で覚書を交わした「転出入バンク」の再構築である。
② 保育所の充実:検討中の2014年10月、2丁目の市立保育園の民営移管計画が決まり、翌年11月、中山駅近辺で保育園経営実績のある社会福祉法人「山百合会」に決定した。この間、同WGで、若葉台での女性の働きに合わせた保育プランを構築し、若葉台連合自治会を通じて横浜市に民間委託に際しての申し入れを行うと同時に、山百合会との間で民営化に合わせて開設後の諸々の条件整備を検討。2017年度民営化を契機に、若葉台連合自治会内に「若葉台保育園民営化特別委員会」を設置、100年プロジェクトの終了後は、同委員会が若葉台住民の保育問題の受け皿になり、さらに要件を詰めることで今日に至っている。
③若い世代の流入の促進:県公社が取組んだ事業として、
㋑「コミュニティ・オフィス&ダイニング“春”」の開所、
㋺体験入居室の設置、
㋩タウンガイドの制作・配布、
㊁子育てMAP「若葉台においでよ」の制作・配布などが実践された。さらに県公社が協力した事業として、
㋭親と子のつどいの広場「そらまめ」の開所、一方 転出入WGが主に取り組んだ事項として、
㋬若葉台の「魅力・強み」に関するブレーン・ストーミングの実施等々がある。

(5)これらの実践への道程と期待、今後の課題  
100年プロジェクトで取組んだ100年マンション憲章の中の2つの課題、「建物・設備の長寿命化を目指す管理」、「世代循環型団地を目指す運動」、は縷々述べた通り、①大規模修繕周期の18年への延長を可能とする論拠、②配管類の専有部分まで踏み込んだ管理組合による更新工事を可能とする仕組み、③階段の多い住棟でのいす式昇降機によるバリアフリー化への提言、④保育園の充実を含む若い世代の流入促進の活動等は、一部は実現できたが、まだ緒に就いたばかりであり、提言にとどまっているものもある。これらを完成するには、多くの費用の掛かるものもあり、若葉台住民の共通理解と合意が必要になるものも多い。また、3年間のプロジェクトで取組んだが検討半ばのもの、より深く検討を要するもの、さらに未取組みの課題等々、今後「続100年マンションプロジェクト」が必要になる時期が来るであろう。

3.全管連「専有部分を含む配管類の管理組合による更新工事」調査から
(1)調査の目的と経緯、調査管理組合の特徴  神奈川マンション管理組合ネットワーク(略称:神管ネット、全管連会員団体)で、筆者が主となり、2013年度国交省の研究助成金を得て行った「管理組合の改良による再生調査」で、総計126事例調査の中で、①築30年以上の管理組合で多かった配管類の事例(総計40件弱)結果と、②最近高経年マンションで起こっている専有部分の床下配管類の水漏れ事故や管理組合の取組みに際しての課題が多いことから、2016年度全管連で、筆者を委員長に、国交省の調査研究助成を得て、「専有部分の配管類の管理組合による一斉更新工事の事例調査」を行った。これまで管理組合が守備範囲とした「共用部分の管理運営、保守・点検、修繕」では、100年マンションを標榜する時、避けて通れない部分であること、これに対する規約や実施に際しての十分な手当てがなされていないことなどが、この調査のきっかけであり、その結果を踏まえて管理組合による規約改正や一斉工事の手順を提案することが目的である。  調査分析対象は32事例、計30管理組合、うち築30年以上が87%、3棟以上の郊外団地型が半数弱である。専有部分を含む配管類の再生工事が高経年に伴うものであり、長寿命化を標榜する時、管理組合にとって避けられない取組みであることが分かる。
(2)管理組合による更新工事の特徴  計32事例は、管理組合による取組み実施例の情報を持つ全管連役員が収集し、工事の特徴と、管理組合の取組み方を分析した。本稿では、その概要を抜粋して列記しておく。

 
・表中、①は共用部分の配管更新工事であるが、パイプスペースが専有部分内にあり、工事に際して管理組合の専有部分に対する対応に類似の取組みがあるからである。工事額の大きな違いは、配水管やパイプスペースが1か所か2か所かによる影響が大きい。
・②、③は、電気関係の更新で、②は幹線(共用)から分電盤(専有)までの強電部分の更新で戸当たり30万円前後の範囲である。③はTVのアンテナ更新で戸当りの工事額は少ない。
・④から⑫までが給排水・給湯、汚水、ガスまでの専有部分、一部共用部分の配管類更新工事である。④、⑤は給湯や雑排水管のみの単独工事で、④は専有部分のみ、⑤は専有、共用同時工事である。
・⑥以降は、複数の配管類の同時更新工事で、特に⑨以降は3種類、4種類の同時工事である。概ね複数の配管類更新では工事額も大きくなり、100万円を超える工事も出てくるが、1回の工事でも建築工事(仕上げ面の取り外し・復元)の約30万円/戸を含むこと、専有部分に入っての工事を何度もできないことなどから、可能な工事費用の範囲で異なる種類の配管類の同時工事を選択することが伺える。

(3)合意形成と工事額の出所
・設備配管類工事例27件中、修繕積立金から100%支出が21例(80%弱)、他の6例は修繕積立金からの支出額が10%~65%である。その内訳は、専有部分を各区分所有者の一時金払いの他、建築工事の原状復帰(管理開始時への復元)までを修繕積立金で賄い、それ以上の仕上分を個人負担にしている。 ・上記のように多くを修繕積立金から支出する事で、合意形成をしやすくしている。 ・工事に際して規約改定をしたのは僅か6事例のみで、多くの管理組合では規約改定までせず、総会決議だけで実行しており、裁判にならなければハッピーというべきであろう。

(4)管理規約が取り組むべき手順と課題 ・数少ない規約改定した事例の中では、第2章「若葉台100年マンションプロジェクト」の②専有部分の管理組合による共同管理・修繕積立金取り崩しによる工事等に関する規約改訂案に示した規約改定や、専有部分への立ち入りを可能とする条項の加筆がみられる。 ・今後、高経年マンションで想定される専有部分の配管類の管理組合による更新工事に向けてなすべきことは、①規約上、これを可能とする「専有部分の配管類の管理組合による更新工事」と、その時の「修繕積立金からの取り崩しを可能とする条項」の加筆、②さらに修繕積立金を少しでも潤沢にしておくことである。徴収修繕積立金のみの値上げではなく、目的別、期間限定型の特別積立方式(例えば、「配管類更新用10年積立基金」)も選択肢の一つである。

4.100年マンションを実現するための管理とは
(1)攻める管理の実践:長寿命化を射程に入れた長期的視点に立つ管理規約と運営 若葉台住宅管理組合協議会が取組んだ「100年マンションプロジェクト」では、協議会が設立された1989年から今日まで、日常の管理で忙殺せざるをえない個々の管理組合では取り組みにくい、中長期の課題を取り上げ、中でも本稿で紹介した「長寿命化に向けた指針」は、若葉台内だけでなく、マンション管理情報の一つとして斯界から注目されている。その要因は、近年、マンションが建替えにくい住居形態で、しかもそれ故に、どう取り組むべきかの解を求めているからである。若葉台の100年マンションを求めての取組みはこうした社会への解の一端を示しているものである。

(2)専有部分まで含めた共同管理の実践:専有部分の配管類を含めた管理組合による管理  区分所有法が制定されたころは、今日見られるようにマンションの長寿命化を想定していなかった。50年定借地権付きマンションがその典型である。しかし、すでに多くのマンションが今や60年、70年先を見込んだ長寿命化を目指す状況である。100年マンションでは、共用部分である躯体の長寿命化だけでなく、専有部分にある設備、特に配管類の更新迄含めた管理が不可欠である。第3章で述べた全管連による「専有部分の配管類の更新」調査は、このような視点に立ったものである。

(3)合意形成とコミュニティ醸成、既存マンションの長寿命化への法制度の整備を 国や自治体がまだ法制度化に至っていない段階でも、マンションは、
①積極的な管理で、改良による再生を含む長寿命化と、
②住民の合意形成、そのための絆作り(コミュニティ形成)」が何よりも重要なのである。100年マンションを標榜する時、区分所有法や標準管理規約の「別段の定め」を積極的にとらえ、現行の標準管理規約を超えた規約つくりが求められる。その上で、将来は他の既法(建築基準法や消防法等)が「マンションの改良再生」の障害にならないよう、全管連の提言している「マンション再生法」の制定まで進める必要がある。
(関東学院大学名誉教授・全管連相談役 山本育三)    
 
100年マンションを目指し動き出した若葉台団地=横浜市旭区若葉台
 

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